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シアン系廃水の一般的な処理法はアルカリ塩素法です。
アルカリ塩素法で分解できるシアン化合物と分解できない化合物を下記に記載します。
分解性 | |
遊離シアン | 〇 |
Cu シアノ錯体 | 〇 |
Zn シアノ錯体 | 〇 |
Cd シアノ錯体 | 〇 |
Ni シアノ錯体 | やや難分解 |
Ag シアノ錯体 | やや難分解 |
Fe シアノ錯体 | ほとんど分解できない |
Co シアノ錯体 | ほとんど分解できない |
Au シアノ錯体 | ほとんど分解できない |
アルカリ塩素法で分解できるシアン化合物は、遊離シアン、Cuシアノ錯体、Znシアノ錯体、Cdシアノ錯体です。
通常のORP制御で処理するのが一般的です。
また、難分解性のものにはNi、Agのシアノ錯体があり、過剰塩素と長時間の反応で分解可能です。
ほとんど分解できないものとして、Fe、Co、Auのシアノ錯体があります。
これらに対しては、吸着法や難溶性塩生成法を使い処理します。
シアンの処理に広く適用されている方法です。
シアン濃度が数百mg/Lの廃水に向いています。
アルカリ性で、NaOCℓ(次亜塩素酸ナトリウム)を添加する工程と、
次いでpHを中性としてさらにNaOCℓを添加する二段階で分解が行われます。
【一段反応】
pH10.5 、ORP+300mV
NaCH+NaOCℓ → NaCNO+NaCℓ
※シアン酸の中間生成物である塩化シアンの加水分解を促進するため、一段反応はpH10以上で行います。
【二段反応】
pH7.5 、ORP+600mV
2NaCNO+3NaOCℓ+H2O →N2+3NaCℓ+2NaHCO3
※二段反応を中性で行う理由は、シアン酸の分解が中性で反応が速くなるためです。
シアンは最終的に、N2(窒素ガス)とCO2(二酸化炭素)に分解されます。反応時間は一段目が約10分、二段目が30分程度です。
シアン化合物とオゾンの反応により、シアンはN2とHCO3-(重炭酸イオン)に酸化分解されます。
CN-+O3 →CNO-+O2
2CNO-+3O3+H2O →2HCO3-+N2+3O2
オゾン酸化法においても溶液のpHの影響が大きく、pHが11~12の場合に最も効率が良いとされています。
オゾン酸化法は、反応生成物に有害物を含まない利点がありますが、オゾンを吹き込む気液反応であること、オゾンのランニングコストが高いことがデメリットです。
難分解性のニッケル錯体の処理は可能ですが、鉄、金、銀の錯体に対しては処理が出来ません。
シアン排液が濃厚な場合、効率よく、また経済的に処理するには、電解酸化法が適しています。
CN-+2OH-→CNO-+H2O+2e
2CNO-+4OH-→2CO2+N2+2H2O+6e
CNO-+2H2O→NH4++CO32-
分解フローは、シアンが陽極酸化によりまずCNO-になり、続いてN2とCO2に分解されると同時に加水分解が起き、一部アンモニアが生成されます。
鉄やニッケルのシアン錯体に対しては適用することが出来ません。
A)紺青法
鉄シアノ錯体の処理法の一つとして紺清法があります。鉄シアノ錯イオンは水中に鉄が過剰に存在すると、難溶性塩を生成します。
3[Fe(CN)6]4-+4Fe3+
→Fe4[Fe(CN)6]3(プルシアンブルー)
2[Fe(CN)6]3-+3Fe2+
→Fe3[Fe(CN)6]2(ターンブルブルー)
[Fe(CN)6]4-+2Fe2+
→Fe2[Fe(CN)6](ベルリンホワイト)
この場合、鉄が不足するとFe[Fe(CN)6]-(可溶性プルシアンブルー)が発生し、 処理は不完全となってしまいます。
また、溶液のpHが上がると水酸化鉄とヘキサシアノ酸に分解するため、固液分離は酸性(pH6以下)で行うことが必要です。
B)亜鉛白法
鉄シアノ錯体の処理法の一つとして亜鉛白法があります。
紺青法に比べると適用pHが広く、pH8~9でも難溶性塩化可能です。
FeSO4・Zn SO4を用いて鉄シアン錯体をZn2[Fe(CN)6](フェロ亜鉛)の難溶性塩(白色)の形で処理する方法です。
C)銅添加難溶性塩法
銅塩(Ⅱ)は還元剤共存下では、各種シアノ錯体と反応するだけではなく、遊離シアンとも反応することが知られています。
銀シアノ錯体を含む排水からの銀回収や、鉄シアノ錯体を含む排水の処理へ適用することが出来ます。
1)吸着法
難解性シアノ錯体は吸着材による処理が可能です。
例えば、鉄シアノ錯体を活性炭に吸着させ、アルカリ溶液で遊離させる方法や、活性アルミナにマンガン、銅などの重金属を担持させ、吸着させる方法などが
あります。また、弱塩基性樹脂又は活性炭に金シアノ錯体のまま吸着させることで、処理水中の金を0.1mg/ℓ以下まで処理可能です。
飽和に達した吸着材は焼却され、残留物から金が回収されます。
2)生物的処理法
シアンのような生物に対して強い毒性を示すものを含む排水についても微生物を馴養すれば生物的処理が可能です。
活性汚泥にシアンを含む排水を少量ずつ添加し、微生物に耐性を持たせると同時にシアンを分解、資化する菌を増殖させていくことが出来ます。
このような生物学的シアン分解機構は一般にCN結合の切断が起こり、CO2とNH3(アンモニア)に分解すると言われています。
クロム化合物は、メッキ、陽極酸化、化成処理、腐食抑制、つや出しのような金属表面処理に使われています。
特に、クロム酸はアルミニウムと反応して不定形のクロメート被膜を形成します。
この被膜は塗料との密着性を極めてよくする作用があります。
1)クロム廃液の処理
クロム系廃水処理の一般的な方法は、まず6価クロムを3価クロムに還元し、次にpH調整によって水酸化物としてクロムを沈殿される方法です。
還元剤として、ソービス(Na2S2O5)、重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)などが使用されます。
硫酸第一鉄による処理はソービスの場合よりもコストが高く、また、処理で生成するスラッジの発生量はソービスによる処理の場合よりも約4倍多いというデメリットがあります。
①ソービス(NaS2O5)による還元
還元:4CrO3+3Na2S2O5+3H2SO4
=3Na2SO4+2Cr2(SO4)3+3H2O
沈殿:Cr2(SO4)3+3Ca(OH)2
=2Cr(OH)3+3CaSO4
②硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)による還元
還元:2CrO3+6FeSO4・7H2O+6H2SO4
=3Fe2(SO4)3+Cr2(SO4)3+48H2O
沈殿:Cr2(SO4)3+3Fe2(SO4)3+12Ca(OH)2
=2Cr(OH)3+6Fe(OH)3+12CaSO4
2)クロム酸の回収処理
クロム酸の回収方法としてイオン交換法が有用です。例えば、耐酸化性陽イオン交換樹脂に通せば再生が出来ます。
クロム酸を使用した陽極酸化液の主な不純物であるアルミニウムと3価クロムは樹脂に吸着され、そして浄化された溶液は浴に戻します。
水回収により、排水は少量に濃縮されて排水処理が容易になるメリットがあります。
無電解ニッケルメッキ廃液の成分として、次亜リン酸イオン、メッキの結果生じた亜リン酸イオン、pH調整材としての複数の有機酸、金属塩としてのニッケルが含まれ、COD総量規制、窒素、リン規制をクリアする必要があります。
無電解ニッケルメッキの処理
無電解ニッケルメッキ廃液処理の課題を大別すると3項目にしぼられる。
①リンの処理
還元剤として用いた次亜リン酸、亜リン酸イオンが含まれます。
次亜リン酸は排水処理に有効な沈殿が無いため、酸化によりリン酸または、亜リン酸イオンにする必要があります。
②ニッケルの除去
メッキ成分として廃液中に含まれるニッケルは中和処理では水酸化ニッケルとして沈殿除去が難しい物質です。
③COD除去
廃液中の次亜リン酸、亜リン酸、有機酸がCODの要因となっています。
リンの除去が達成できればリン酸要因のCODは必然的に除去されます。
一方有機酸要因は化学的、生物学的な処理が必要となります。
現在提案されている処理方法として
A)無電解ニッケルのメッキ基本反応を利用する方法
B)電気分解による方法
C)紫外線照射による酸化を利用する方法
などがあります。